今日も午後は雨模様らしい。低気圧が次々と日本のそばを通り過ぎるからだ。しかしこの時期、一雨ごとに春が近づいてくる。雪だって3月になれば水気たっぷりの大きな牡丹雪が多くなる。水気を吸った木の芽は大きく膨らんでくるのだ。
  現職時代、私は病的なほど雨が嫌いで、朝起きて雨だとわかると急に出勤拒否に陥ってしまった。実家に車と、猫のエルを預けて傘のお世話になりながら駅に向かうのだが、歩き出すと定期券がなかったり、ハンカチを忘れていたりする。あきれ返った奥は私の分のハンカチを持っていたものだ。私にしてみればあの、雨でぬれた肌感触や、スーツの裾や肩の濡れるのが許せなかったのだ。ところが、海の上ではちっとも苦にならない。「雨ぐらいのほうが海が暗くて魚の警戒心が落ち、釣果が上がる。」と信じているほどである。
 亜熱帯から亜寒帯に位置する日本は雨が多い。この雨が豊かな自然を創ってくれている。魚も動物も、そして植物も世界一と言ってよいほどの豊富な種類である。これらが日本の文化を醸成してきた。文学や然り!自然に対する感性然り!食文化然り!     
 話を雨に戻せば、旧暦2月を木の芽月ともいうから、この時期の雨を表す言葉は木の芽雨だろうか。何とも粋な呼び名ではないか!昨日の千倉、白浜、洲ノ崎、館山辺りでは菜の花が満開だったが、菜種梅雨なんて黄色が鮮やかに目に浮かんでくるきれいな言葉もある。その後は卯の花腐しかな?春雨とくれば秋霖なんて言葉の響きも美しい!その他虎が雨、半夏雨、氷雨、時雨、寒九の雨・・・・。これらは気候や季節を表しているけれど、雨そのものに関わる名詞はいったいどれほどあるのだろうか?霧雨、小糠雨、白雨、篠突く雨、にわか雨、肘傘雨、驟雨、が、豪雨までくるとこれはもう来ては欲しくない。そうそう、遣らずの雨なんてのもある。もはや私には縁のなさそうな?雨である。
 雨が降り出してきた。晴ればっかりだったら砂漠になってしまう。今日は、昨日番屋で買ってきた鯵の丸干しを肴に温燗を呑みながら、庭に降る雨でも眺めて過ごそうか。・・・紅の 二尺伸びたるバラの芽の 針柔らかに 春雨の降る・・・は大好きな歌であるが、春雨にはちと早いようである。肌寒い!