昨日の話の続き。
 当然おっちの話になった。一つテンヤ用の竿を作るためにおっちには10本からの竿を渡して試釣を繰り返したという。「おっちは巧かったねぇ。」という言葉に竿を振るう金太郎さんのような風貌の佐藤船長の姿が浮かんだ。彼の竿先を見つめていても私が中りを見つけることはできなかったが、次々とタイを釣り上げてみせた。釣り上げたタイを私の足元に投げるので「ありがとう。」と礼を言うとにこっとしていたっけ。1つテンヤは佐藤船長に教えてもらったのだが、釣り船業をやめるまでは㐂栄丸だけに通っていた。当時は5号以上のテンヤは持っていなかった。そのことを告げると「ああ、おっちは5号以上は必要ねぇなんて言ってたねぇ。」と返ってきた。
 ニットウを辞するときに思い切って尋ねてみたがおっちの所在は不明とのことだった。